こんにちは、山田ハヤオです。Arch Linux大好き星人です。
先日、ついにApple M1チップ上で動作するLinux、「Asahi Linux」がリリースされました。
最近知ったのですが、開発者は日本人ではないものの、日本に住んでいるそうです。
Arch Linux ARMの日本ミラーサーバをホスティングしてもいるとのこと。
せっかく人並みにArch Linuxは触れるし、M1 MacBookProも持っているのでAsahi Linuxをインストールしてみました。
Asahi Linuxとは
Asahi LinuxはArch Linuxm ARMをApple M1チップ上で動作するようにチューニングしたOSです。
まだLinuxカーネル公式にマージされていない専用ドライバや専用ブートローダ(m1n1)、インストーラなどを提供しています。
Asahi LinuxプロジェクトはArch Linux ARMがメインですが、ディストリ開発者と協力して他のOSも動作させたいとのことです。UbuntuやDebianが動く日も近いかも。
Asahi Linuxをインストール
ということでAsahi Linuxをインストールしていきます。
と言っても、今までの普通のLinuxディストリとは方法は大きく異なります。
普通のLinuxなら、イメージファイルをUSBに焼いてからインストーラを使います。しかし、Asahi Linuxの場合はMac OSで起動した上でターミナルからインストーラを起動します。
執筆している2022年3月25日現在ではMac OSとのデュアルブートのみ対応し、Asahi Linuxのみにすることはサポートされていません。
Twitterにて開発者と直接コンタクトを取ったところ、「Linux側からファームウェアを更新する方法がまだないのでメンテナンス性的にもデュアルブートが望ましい」とのことです。
スクリプトを実行
方法の大半は公式サイトに書かれています。
mac OSから以下のコマンドを実行します。
curl https://alx.sh | sh
シェルスクリプトが実行され、その後Pythonで書かれた本格的なインストーラが起動します。
インストーラは全て英語なので、苦手だと苦労するかもしれません。
注意書き
インストーラはRootで実行する必要があります。プロンプトが表示された場合はパスワードを入力してください。
Asahi Linux Installerへようこそ。
このインストーラはアルファ版です。一部の環境では正常に動作しないかもしれません。
これはバグの報告に慣れていて詳細なレポートを提出できる開発者や早期アクセス者向けです。
以下のドキュメントを熟読してください。
Enter キーを押して続行します。
注意書きを読んでエンターを押してください。
エキスパートモード
デフォルトでは、インストーラは特定の開発者用の追加のオプションを表示しません。エキスパートモードを有効化してそれらを表示しますか?
>> エキスパートモードを有効化?(y/N):
エキスパートモードについてです。面白そうなので有効化してみます。
この後で、これに関すると思われる設定が出てくるのですが、マジで危険らしいのでオフにした方です。
パーティショニング
パーティション情報を収集しています...
システムディスク: disk0
OS情報を収集しています...
システムディスク内のパーティション:
(省略)
OS 'Machintosh HD' (disk3s1) をマシンの認証に使用します。
何をするか選択してください:
r: 既存のパーティションをリサイズして新しいOSのためのスペースを作成する
q: 何もせずに終了する
>> 動作 (r):
「r」キーを押してリサイズを行います。
リサイズを行うパーティションを選択してください:
ここでパーティションのリサイズを行います。リカバリーと書いてある方は操作するとマジでやばいらしいので、「Machintosh HD」というサイズの大きい方を選択します。
今回の場合は「1」を入力します。
以下のパーティションがリサイズされます:
APFS [Machintosh HD](245.11 GB, 6 volumes)
合計サイズ: 245.11GB
空き容量 : 141.28GB
最小空き容量: 1GB
最小合計サイズ: 104.83GB(42.77%)
既存のパーティションの新しいサイズを入力してください:
'1GB' のようなサイズや'50%'のような相対的なサイズ、'min'(最小限のサイズ)などを指定できます。
例:
30% - 30%をmacOSに使い、70%を新しいOS(Linux)に使います
80GB - 80GBをmacOSに使い、残りを新しいOSに使います
min - macOSのディスクを安全な範囲で最小限のサイズに可能な限り縮小します
>> 新しいサイズ(50%):
今回はLinuxを小さめにして60%をmacOSに割り当てます。
縮小して98.04GBの空き容量を作成します。
注意: リサイズ中はシステムがフリーズしているよう見えることがあります。
これは通常の動作なので、操作が完了するまで待機してください。
>> 続行しますか?(y/N):
そのまま「y」を押します。警告通り、開発者の環境でも実際にフリーズしました。
実行中なのでしばらく待ちます。
リサイズが完了しました。Enterキーを押して続行します。
しばらく待ってると黄色い文字が出てくるので、Enterキーを押して続行します。
インストール先を選択する
OS 'Machintosh HD' (disk3s1) をマシンの認証に使用します。
何をするか選択してください:
f: OSを空きスペースにインストールする
r: 既存のパーティションをリサイズして新しいOSのためのスペースを作成する
q: 何もせずに終了する
>> 動作 (r):
先ほどのメニューに戻ってきますが、選択肢が増えています。
今度は「f」キーを押してインストールに進みます。
インストールするOSを選択してください:
1: Asahi Linux Desktop
2: Asahi Linux Minimal (Arch Linux ARM)
3: UEFI environment only (m1n1 + U-Boot + ESP)
4: Tethered boot (m1n1, for development)
ここでAsahi Linuxを使うユーザーが使う選択肢は1か2です。
3はArch Linux以外のOSを入れるために使用し、4はブートローダの開発に使用します。
1はPlasma DesktopとセットになったArch Linuxで、すぐにGUIを使い始めることができます。
2は最小限のArch Linux ARMです。ほぼ基本的なものしか入っていないので既にArch Linuxを使ってる人にとっては最良の選択肢です。今回はこの2を選択します。
2の最小限構成は、Wi-Fi接続のためのツールもないので有線接続が必須です。
有線接続ができない場合は1のフルデスクトップを選択した方がいいです。
新しいOSのサイズ
OSのパッケージ情報をダウンロードしています...
OSの要求する最小限のサイズ: 8.00GB
利用可能なディスクスペース: 98.04GB
どれくらいのディスクスペースを新しいOSに割り当てますか?
'1GB'のようなサイズや、'50%'のような相対的な表現、'min'(OSの要求する最小限)、'max'(全ての利用可能な空き容量)が使用できます。
>> 新しいOSのサイズ(max):
今回は開けた空白全てをLinuxに割り当てるためにmaxと入力しました。
そのほかの設定
OS名を入力してください
>> OS名(Asahi Linux):
Bootファームウェアとして使用するmacOSのバージョンを選択してください:
(よくわからない場合は、そのままEnterを押してください)
1: 12.3
>> Version (1):
OS名とファームウェアの設定です。正直ほとんど関係ないのでどっちも何も入力しないでEnterキーを押して問題ないです。
色々な処理
macOS 12.3をOS ファームウェアとして使用します。
macOS パッケージ情報をダウンロードしています...
Asahi Linuxと命名されたスタブmacOSを作成しています
スタブ macOSをdisk0s5にインストールしています
ターゲットボリュームを準備しています...
スタブmac OSというのはLinuxの起動のために使われているmacOSのことらしいです。
ここら辺は全て自動でインストーラがやってくれるのでお茶でも飲みながら待ちます。
スタブOSのインストールが完了しました。
EFIパーティション(500.17GB)を追加しています...
FATでフォーマットしています...
ルートパーティション(95.04GB)を追加しています...
ファームウェアを収集しています...
tar: ロケールの設定に失敗しました
OSをインストールしています ...
EFIシステムパーティションからdisk0s4にコピーしています...
\ 100.0%
ファームウェアをdisk0s4にコピーしています...
root.imgをdisk0s7に展開しています...
0.00%
インストールを完了する準備をしています...
インストーラ情報を収集しています...
インストールを続行するには、macOSの管理者の認証情報を入力する必要があります。
hayaoのパスワード:
macOSのパスワードを入力して続行します。
新しいOSをデフォルトのブートボリュームとして設定しています...
インストールが完了しました!
インストール情報
(省略)
新しいOSを起動可能にするには、もう一つのステップが必要です。
以下の文章を注意深く読んでください。失敗すると新しくインストールされたOSがブート不可能になります。
Enterキーを押して続行します。
色々と怖いことが書かれていますので、恐る恐るEnterキーを押して続行します。
システムがシャットダウンしたのち、以下のことを行ってください。
1. システムが完全にシャットダウンするまで15秒待機してください
2. 長押ししてシステムを起動してください
*このステップの前にシステムを完全に終了し、何度も押さずに1度だけ長押しすることが重要です。
これはリカバリーモードで起動するために必要です。
3. 「スタートアップオプションに入っています...」と表示されたら電源ボタンから手を離してください
4. ボリュームリストが表示されるまで待機してください
5. 'Asahi Linux'を選択してください
6. 'macOS リカバリー'ダイアログが短く表示されます
*もし「リカバリするボリュームを選択してください」と表示されたら通常のmacOSを選択してください。
また、macOSのユーザーで認証する必要があるかもしれません。
7. 'Asahi Linuyx installer'画面が表示されたら、その画面の指示に従ってください
Enterキーを押してシャットダウンします。
電源ボタンをAndroidのリカバリを出すような感じで長押しして起動します。
Asahi Linuxで起動する
Asahi Linuxを選択します。
インストールの第二ステップ
macOSのユーザーが表示されるので認証します。
Asahi Linux インストーラ (第二ステップ)
(省略)
ログイン情報を入力するプロンプトが表示されます。
(最初のステップで実行していた)macOSの認証情報を入力してください。
Enterキーを押して続行します。
ボリューム グループ UUID <略> を操作しています。
このユーティリティは通常のユーザー向けのものではありません。
これは、「リカバリーOS」のスタートアップセキュリティユーティリティなどでGUIを介してセキュリティポリシーを変更するときに自動で変更される機能へ抽象化なしに直接アクセスします。
このツールを使うとシステムのセキュリティをより弱くし、脅威へと晒すことを可能にします。
このツールは製品版の環境では使用されず、ブート不可能にすることさえ可能です。
AppleシリコンのMacのセキュリティがどのように動いているかを理解するためだけに使用してください。
全ては自分自身の責任です。
hayaoのパスワードを入力してください:
これはおそらく最初のエキスパートモード用のメニューだと思います。
まずは大人しくパスワードを入力しましょう。
カスタムブートオブジェクトを設定することで、システムをより寛容なセキュリティに設定します。
本当にこれを実行してもよろしいですか? (yかnを入力してください)
怖いのですがyを入力しておきます。
多分エキスパートモードをオンにしていない場合表示されないと思います。
エキスパートモードを無効にしていると表示されませんでした。
インストール後の設定
ここからは最初に選択したOSによって変わってきます。
Arch Linux Desktopの場合
PlasmaDesktopとセットのOSを選んだ場合は、GUIインストーラでお馴染みのCalamaresが起動します。
Calamaresをポチポチ操作する
日本語を選んで「次へ」をクリックします。
タイムゾーンを選択して「次へ」をクリックします。
一般ユーザーを作成します。
Asahi Linux起動!
Plasmaが表示されれば完了です。
最小限のAsahi Linuxの場合
ユーザー名
ローカルマシンのポリシーをアップデートしています...
ユーザー名:
ユーザー名を入力します。
パスワード
パスワード:
ブートオブジェクトをインストールしています...
完了
インストールが完了しました。Enterを押して再起動します。
そのままパスワードを入力します。
Asahi Linux起動!
完了すると、再起動してほぼ素のArch Linuxが起動します。
色々なデスクトップ環境を入れてみる
最小限のArch Linuxをインストールし、色々なデスクトップを入れてみました。
Gnome 42
ブラウザ入れて、日本語入力とFish環境をセットアップしました。
ついでに Dash To Panelも入れてそれっぽくカスタマイズ。
写真からは分かりにくいですが、ポインターが異様に早い上にスクロールがデカくて非常に操作しにくいです。しかも解像度を変更できない…
Xfce
みんな大好き元祖デスクトップのXfceも入れてみます。
こちらはGnome以上にひどく、マジで小さすぎて何も操作できないです。
DPIを変えても根本のUIが小さいままなので、異様にフォントだけ大きくなって余計におかしくなります。
おまけ
Asahi Linuxでyayなどの通常のツールを導入している様子です。
日本語入力問題
Fcitx 4を導入しても、日本語切り替えを正常に行えません。自分の環境だけかな…
Fcitx 5を導入して設定すれば正常に最低限の日本語入力環境は構築できました。
(mac OSのライブ変換に慣れすぎて快適かと聞かれたらNoですが…)
レイアウトは「日本語 Mackintosh」ではなく通常のものを選択してください。
ディスプレイに関する問題
Asahi Linuxの公式サイトには書かれていなかったのですが、解像度変更ができません。
また、明るさの変更もできません。Xfceで明るさの変更をしようとすると何も表示されなくなります。(GnomeやPlasmaでは、変更しようとしても何も起きませんでした)
解像度は、GUI上で変更できず、Xrandrを利用して強制的に変更しようとしてもドライバのエラーでできません。
なのでAsahi Linux側のアップデートを待つしかなさそうです。
通信について
最初にも触れましたが、最小限のArch Linux ARMの場合はネットワークに関するツールがdhcpcdしかないので、WiFiに接続できません。
一度設定ツールの導入さえできれば、通常のLinuxと同じようにWiFiを使用できます。
ただ、公式サイトによると不安定で、切断される場合はオンオフをくり返せとのこと。
また、Bluetoothは公式も明言している通り一切使用できませんでした。
macOSの起動について
Linuxをインストールしても、これまでのmacOSが残っています。
再起動時と同じ方法で、長押ししてからmacOSを選択することで以前と同じOSで起動できます。
「環境設定」→「起動ディスク」から起動にデフォルトで使用するOSを選択可能です。
アンインストールについて
パーティションを削除するだけで簡単にアンインストールできます。
ただし、macOSに付属しているGUIのディスクユーティリティは正常に動作しないそうです。
CLIのdiskutilからパーティションとボリュームの削除を行う必要があります。
執筆している2022年3月25日では、アンインストールするための安全で確実なツールは提供されていません。
使ってみた感想と締め
解像度変更ができないのが一番しんどかったです。次にトラックパッドのスクロール速度。
この2つはドライバに依存しているので、ユーザーランドから変更できません。
(一応どちらも変更する汎用ツールがありますが、機能しませんでした)
また、これはAsahi Linuxだけではありませんが、一部のツールがaarch64で実行できないのも個人的にしんどい点ですね。macOSと違ってエミュレーションがない分Linuxのほうが顕著でした。
それでも、プロジェクト初期ではシリアルコンソールや2台のM1が必要だったAsahi Linuxも、単体でウィザードに従うだけでインストールできるので非常に楽になった気がします。
今後カーネルパッチがメインラインにマージされ、DebianやFedoraなどでもサポートされればよりM1が魅力的で楽しいものになるはずです。
今後もAsahi Linuxの動向を追っていこうと思います。
それでは、また今度。
更新履歴
2022/03/26 18:00 公開
2022/03/26 23:00 誤字修正(入力するキー「s」→「f」)
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